end
05.5
ユ キ
念願が叶って僕は【王の慈悲】に合格することが出来た。
僕と一緒には第七部隊に配属されたのは青い髪をした男と黒い髪をした男だった。いちおう同期ということで仲良くなっておくに越したことは無い。
ということで親睦を深めるために僕は二人に声をかけた。キョーヤという青い髪のほうはなんだか街にそこらへんにいるヤンキーぽかったので、可も無く不可も無いといった黒髪のの方に声をかけた。
「ね、君ってどこ出身?」
下から覗き込むようにして笑顔で聞くと、は気持ち悪そうな顔をした。…なんてヤツだ。僕の笑顔には老若男女が思わず笑顔を返すしかないスマイルなのに。
多少のうぬぼれであるというのは僕自身が分かっているので、その変な顔には触れずに、さらに聞く。
「あれ?答え辛い質問だったかなー?僕、ユキ。ネリマの出身なんだ。歳はねー、ひみつ!」
「……」
明るく振舞って二人の様子を伺うが、二人ともちょっと冷めた目でこちらを見ている。なんなんだよ、その目!僕のこの無言の状態をどうにかしてやろうという心が分からないのだろうか。
「僕、まだシキさまとアキラ様のお顔を生で見たことないんだけど、やっぱり二人とも美しいのかなぁ…」
ここは、共通の話題に出来そうなシキ様とアキラ様のことを出してみる。部隊の人間は皆、シキ様派かアキラ様派に人気が二分しているという。僕はまだテレビ放送でしか見たことがないけれど、そりゃもう二人とも強烈な印象を残す人だった。
シキ様のお顔がドアップになったとき、画面一面に広がった赤い瞳を見た時は痺れたからね。
僕はどっちかっていうとシキ様派かな。もちろん、アキラ様も綺麗な人だと思うよ。そのあたりは僕の個人的好みってとこかな。
「僕凄いカッコいいと思うんだよね。美人だし、強いし、……二人の出会いとか凄く気になるよねー」
「ブハウッ!」
が思いっきりむせた。
何も口に含んでいたわけではないのに目を白黒させて動揺している。器用なことだ。なにがそんなに噴出すことでもあったか?
「お、おい。えっと、だったか?お前大丈夫?」
「あ、ああ。持病の発作が…」
強面のキョーヤが驚いてを咄嗟に介抱する。意外に面倒見がいいというか、根がいいやつのようだ。目つき悪いし、もっとスカした奴かと思ったが、の背中をさすってやっているあたり年下の兄弟でもいそうだ。僕は一人っ子だからそういう気質は無いけど。やるよりやってもらうほうがいい。楽だしさ。
「持病…!?お前そんなもん持ってんのかよ?」
キョーヤが驚き、心配そうな顔つきになった。
てか……持病なんてあるわけないじゃん。
持病なんて持ってたら入隊できる可能性はゼロだ。どこまでも健常な身体を求められ、隅々まで検査をされたのを忘れてたのかな、キョーヤは。ちょっと馬鹿にした目でキョーヤを見てしまったが、キョーヤは気が付かない。ああ、コイツ、からかったらちょっと面白そうかもなーと思う。
は苦笑いを浮かべて「いや、大丈夫だから」とやんわりとキョーヤの手を外した。は…うーん。なんか人との接触がちょっと嫌いそう?
どっちかていうと、あんまり好戦的には見えないな。それなりに活動的だけど、基本は文系っぽい。まぁ、僕も好戦的には見えないだろうけど。見た目で舐められるのとか嫌いだし。
僕とキョーヤと。
さて、このスリーマンセルって上手くいくのかな?僕は足を一旦止めて、先に歩く二人の後姿を眺めた。
折角、部隊に入ったんだ。こんな下っ端で終わるつもりもないし、命を散らすつもりもさらさらない。
「?どうしたんだ…ユキ?」
僕が並んで歩いていないことに気が付いたが振り返った。キョーヤもに吊られるように足を止め、僕の方をみた。
「キョーヤ、。これから宜しくね!それから…」
僕はにっこりと笑った。
「僕の足引っ張ったら、殺すよ?」