あの空に瞬き浮かぶ星はさて、高貴であるのか傲慢なのか









俺の名前は山田太郎(仮名)。

由緒正しき 一般家庭 の 嫡男である。だがしかし、実は実は大金持ちの息子で、サイキッカーな力を持っていたり、生徒会長をやったり、眼鏡を外せば美形で、女にモテルという








――…事実は一切無い。



うむ、ちょっぴり残念なことに。

高校を卒業して大学に行くという使命を背負った中流家庭の息子であった。こんな、俺に転生(誤字にあらず)の霹靂が訪れた。
目が醒めて、妙に天井が高いところだなー、なんてふかふかなベッドなんだ!なんてウキウキしながら起きると、そこは見知らぬ部屋だった。しまった。ここは「見知らぬ天井だ」と言うのが世の中の常識だった。(むしろ、俺的常識)
どこかのお金持ちに誘拐されたのかなーでも、うち、一般家庭だからなぁー。家のローンとか残ってるしなぁ(是非とも俺が就職が決まる前に親がローンを払い終わってほしいものだ)。俺はベッドから抜け出そうと淵にもって行き、動きを止める。
あのぅ…なんか、俺の脚が小さいんですけど。そして、短いんですけど。
ベットから床に足が着かないぐらいのチビさってなんですか?俺は巨人の国にでも迷い込んだのでしょうか?ガリバー旅行記?鏡の国のアリス?ナルニア物語?
俺はベットから飛び降りると慌てて自身の姿が映るようなものを探した。ちょうどベッドの真正面に姿見ようの大鏡があった。その前に立つのはどう見ても外国人の彫りの深い顔立ちをした子供。

半信半疑というか、半信90%半疑10%の割合で俺は自分の意思で持ち上がる腕を上げてみる。勿論、鏡の中の子供同じ動作をする。

……俺って……実は…日本人じゃなかったのか?

ということはありえない。
俺は日本全国統一民族正式名称日本外国ではジャパニーズな和の国大和の国の出身ですよ?(しつこい)
大体、なんですよ、俺の両眼ったら真っ赤ですよ。
ウサギですか。もしくはタルク族ですか、またはイシュヴァールの民ですか?邪眼ですか?

俺はじっと自分(?)の赤い瞳に見入った。ほぎゃー…真っ赤や。ルビーよりも赤黒い。はっきり言って、自分(?)の瞳ながらちょっとキモチワルイ。個人的に瞳の色は黒が一番見慣れている。

「サラザール?」
「はひ!?」
「サラザール!まだ着替えてなかったの」
「え…と?」
「愚鈍な子ね…スリザリンの子供としてもっとシャキッとしなさい」

あれですか、これは遠まわしにどこかの誰かが俺のことを「君の名前は、サラザール・スリザリンなんだよ☆」とヒント(っつーか正解?)を教えてくれてるんですよね?はい。

…あれぇ?
サラザール・スリザリンって聞き覚えがあるんですけれども?あれですよね、一般人間をマグルとかいっちゃってる、魔法族さんたちですよね?ホグホグワーツの魔法学校作った偉大(?)なる四天王さんたちですよね?

うふふ。一般市民を希望していた俺はどーやら異世界トリップという素敵な体験と現在進行形でしているらしいですよ。恐らくサラザール・スリザリンの母上さま(しかし、サラザールよりは瞳の色がちょっと薄い)は俺を少々忌々しそうに見た。

「三歳になってもこの愚鈍…いっそのこと…」

胡乱に俺を見下ろす母上様の瞳がコワ。あれですか、さっさと殺してしまいたいオーラが漂ってますよ。「いっそのこと…」の続きはズバリ、「死んでしまいなさい!」ですよね。ええ、そのくらいの裏は俺だって読めますよ?綺麗な顔してるのに怖い女性だ。
あ、てか、また情報ゲット!俺は三歳なわけね。うむ。


……ごめん、素でこれからどーしよう。



■□■



サラザールに・スリザリンになってから早くも二年がたった。
二年って凄く早い。あの日、母上さまから「いっそのこと…」に俺なりに身の危険を感じてしまったのである。あの人の視線はまさに、スリザリンの女だ。
あの女は三歳児に一体何を求めているのやら。要求してくることがおかしい。三歳児にそれは出来ないだろう!?ということを平気で押し付けてくる。大人と同じような扱いを三歳児にするなよあのババァ…と俺が何度思ったことか。

ありえないので、三歳児らしく失敗し捲くりの振りをしました。絶対オレ(サラザール)がオレ(山田太郎)じゃなかったら出来ないと思ったからだ。これがいけなかったのか、母上さまの瞳は絶対零度の魔女のように怖かった(いや、魔女なんだけどさ…)。

父上さまの方が婿養子らしく、父上さまの方が母上さまよりも立場が低いらしい。うわーお!尻に引かれている父上さま、哀れ!!ということで、スリザリンの特性の赤い瞳を持っているのは母上さまはめっさ怖いのですよ。瞳がこう、自分の子供を見る目じゃないっていうか…。

ひぃ!オレが大人でよかったなぁ…。アレ、絶対普通の子供だったら恐怖で萎縮してかわいそうな子供になっちゃうよ。

その結果、オレは一人で勉強を頑張った。スリザリン家だけあって蔵書の数は半端ない。俺はサラザールなので頭の出来は悪くない。すらすらと英語を読める自分に素晴らしく喜びがこみ上げてくる。英語がまるで日本語のようにすらすら読める。理解も出来るので一人で文献読んで魔法を腕を磨きました。
母上さまも父上さまもあんまり家にいないからね。お仕事があるとかでさ。



さて、俺は周りから愚鈍な馬鹿とレッテルを貼られてた。
当たり前だわな。出来ることを人前ではしなかったんだから。出来る子、と回りに見せようとは思わなかった。見せたらきっと母上さまも俺への見る目を変えたとは思ったけどね。だって、面倒じゃん。自分より劣っている人間の前では人間って結構本性でるしさ。出来る子ってことですんごい期待を掛けられても俺としては困っちゃうわけよ。それなりに俺はサラザールと分かっちゃいてもさ、オレはやっぱりオレな分けだし?(本物の)サラザールがどんな幼少期を過ごしたかなんてしらねーし?ま、ここはオレがオレとして勝手にパラレル人生を……と、俺は俺んちのパーティに出てきた大人たちを見ながらのんきにサラダをつついていた。野菜は美味い。

今日は俺んちで人を招いてパーティが開かれている。なんのパーティかといいますと、実は俺に弟が生まれたんです!!
俺ってば一人っ子だったから弟うれCーー!!とか喜んだのはコンマ一秒にも満たない。
むしろ、俺は切実なる身の危険を感じた。
これで、弟が俺より下手に優秀だったらどーするよ?俺、自分が秘密裏に抹殺される予感がするんだけれども……。

生まれたばかりの赤子を抱きかかえた母上様と父上さまがなんちゃって良い家庭をしながら中央階段から姿を表した。
うわーお。俺だけ仲間はずれですね。別にいいですけどもよ。どーせ俺は邪魔モンさぁー。
早々に他人の振りしてテラスに出て、行儀悪く胡坐をかいて持ってきた食べもんを月を見ながら食べていると背後からお声が掛かった。

「よう。お前なしてんの?」
「よう。俺はお食事してンの」

振り向かずに俺は答えた。
ちなみに、誰の声だかもしらん。

「よっこらせっと」
「……なんで隣に座んの?」

親父くさい掛け声で隣に見知らぬ子供が座った。俺とそう替わらない歳。すなわち、六・七歳。
明るい赤茶の髪で青い瞳。おおらかな笑いで大きく開けた口からは八重歯が覗いている。
そうだよ、子供ってのはこんなふうに明るく笑っててくれよ!と言いたくなるような笑顔だ。


「いや。俺も家ん中にいるよりも外で遊んでるほうが好きだし。大体、あれって子供のオレ等に感けいないことじゃん?オレ、ゴドリック・グリフィンドール」
「答えになってないけどね…それに、オレには関係あることなんだよ、俺はサラザール・スリザリン」

日本人の俺としてはあまりなじみがないが、ゴドリックが自然に手を出してきたので俺はそれに答える形で握手をした。つーか、この子供がグリフィンドールの人なのだね。
うわーお、俺ってばハリポタの人と会っちゃったよ!(俺自身が登場人物なのはこの際脇に捨て置く)

「げ、スリザリン!?って、この家の子じゃん…」
「イエース。お初にお目にかかるよ、グリフィンドールの獅子」
「獅子?」
「気にすんな。つか、グリフィンドールの人間が来てたんなら…レイブンクローとかハッフルパフとかも来てるわけ?」
「来てるに決まってるよ。さっき広間で見たよ、オレ」
「へぇ、じゃあ是非とも友達にならなくては…」
「マジで?あの二人、変人だって噂じゃん」
「そうなのか?あんまり他の家のことを知らないんだよ、俺」
「だろうな。スリザリンの嫡男も十分な人嫌いの引きこもりって聞いたことあるぜ」
「失礼な…つっても、ホントのことだからいいよ」
「ふーん、怒らないンだ?」
「別に。怒る必要性感じないし。ゴグリックだっけ?お客様は早々に中に引き返したほうがいいんじゃないの?」

と、こんなところでゴドリックの獅子と出合った俺。
さすがに、こういう出会いは運命な必然?


弟はめっちゃ可愛い。ちょっとしか触れ合う時間は無い(母上さまが俺と弟を遠ざける)けれど、時たま会う赤ん坊な弟はめっちゃ可愛い。俺の母性と父性が刺激される。むくむく。
ちっちゃい手ー、ちっちゃいつぶらな赤い瞳ー、ちっちゃい足ー、可愛いなぁ…。

…だが、そんなほんわかした幼少期なんてのは、すぐに通り過ぎる。
俺は、なんと十二歳になった。そして、弟は五歳になった。
母上さま、弟をベタ褒めのベタ甘やかし。そんでもって俺のことは邪険にこけおろし。

お陰で、弟まで俺のことを鼻で笑いやがった。お兄ちゃん、ちょっとムカついちゃったよー?でも、まだまだその鼻での笑い方は甘いな。もっと、こう顎を上げて、上から見下ろすように人間を同じ土台で語れない下等生物を見るような冷えた目で見ながら鼻で笑わなければならんよ。
まだまだだね!

「兄上…もうすぐ出かけますけど、したくまだ終わってないんですか?」
「わー、そうでしたっけ?なにもやってないですよー」
「……いい加減にしてくだい!今日はレイブンクローのパーティですよ!?昨日の晩餐の時に母上があれほど出かける時間についておっしゃっていたでしょうが!」
「それは申し訳ないですー今から用意するので、待っててくださーい」

なんだこの俺の口調は?
まったりと間延びした口調で俺はのんびりとしたくをはじめる。…弟はいらいらとした様子で俺の横から手を出してきて乱暴に箪笥から俺の服とひっくり返した!

余計なお世話だが、黙ってみておく。

「ほら、これとこれとこれをきてください!」
「えー…」
「早く!」
「うー…」

いやいや着つつ、なんだってこの弟は俺なんかに構いやがるんだと思う。鼻で笑うような尊敬もしてない兄なんだから放っておいてくれっつーの。母上さまだって、俺と弟が話すことを嫌がってんじゃねーの?……俺と弟の部屋、すげー遠いいし。(意図的だとしか思えない)


「うい。久しぶり。ロウェナ、ヘルガ!」
「久しぶりですね、サラザール」「ひさしぶりだな、サラ」

家族ぐるみの挨拶をそこそこに、俺たちは示し合わせたように一目につかない場所で壁の花になる。

「…二人とも、変わってないなぁ」

俺はのちの創立者(簡単に言っちまえば、魔法界の名門の一人でパーティとかで頻繁に会っている幼馴染な感じ)に話しかけた。

俺の少ないハリポタの知識だと、ロウェナ、ヘルガって女だと思ってたんだよ。男女二人ずつが創立者だってさ。まぁ、勝手な思い込みだったわけなんだけど。

創立者は男男男女、だった。
紅一点はロウェナ・レイブンクローだ。…でもコイツ、どっから見ても女に見えない。

「ん?なんだ?私の顔になにか付いているのか?」
「…いや」
「駄目だよー、サラザール、浮気しないで!」
「いや!意味わかんねーから!ゴラァ!腕に引っ付くな!ヘルガ、零れるつーに!」
「ヘルガ、サラの腕を放してやれ。お前のドレスにも掛かるぞ」
「え、それはヤダ!」

上の会話文で分かって欲しい。
ロウェナはそれはそれは男らしい。着ている服も女性がこぞって着るようなひらひらのフリルのドレスなんか持ってのほかで、今だってシックな黒で纏めたズボン着用の正装をしている。
この時代の女性にしては珍しく、ばっさりと潔く切られた金髪をオールバックのように後ろに撫で付けている。
男装の麗人である。


替わって。


「どうどう!今日はとってもおめかしなの!」

くるりとフリフリの正装で俺の前で一回転してみせる。蜂蜜のように深い亜麻色の髪が揺れる。楽しげに輝く緑色の瞳は驚くほど睫がビシバシ。間違えなく美少女だ。

だがしかし、こいつは、男である。

ヘルガ・ハッフルパフ

正真正銘の男である。いくら、髪を伸ばしていようと、おっとりとした性格をしていようと、少女趣味だろうと、俺と同じモノが付いている男なのである。

「………(無言でロウェナとヘルガを見比べている)…ハァー…」

毎度のことながら、この二人が並んで立っている姿を見ると深いため息をひとつ付いてしまう。
この二人はどうして性別が逆じゃないんだろうか。

女男と男女。

世の中って上手く出来てないんだなぁ…と、世界を恨めしく思う一瞬だ。

「サラ。今日のコーディネートはお前が?」
「うんや…弟がやってくれたよ。世話焼きな、ね」
「ほう、弟くんがねぇ…」

笑いを含んだような目線でロウェナが俺を見下ろしてくる。そう、ロウェナは女の癖に俺らよりも身長が高い。細めた目は青く澄んだ水を思わせる。ロウェナは女だから「魔女」って呼ばれるはずだけど、一見うすると「騎士」の役職の方が似合っている。じゃあ、傍らでふんわりと微笑むヘルガは「騎士」の仕える「姫」ってか?(ちなみに、ゴドリックは「兵士」で、俺は「賢者」ってか)

……うーん、百合世界?


「…おい。貴様また変な妄想をしているだろ?毎度毎度、いい加減にしろと私が言っているのを聞いてないのか?」
「ギクゥ、俺はナンも変なことこと考えないよ?え、妄想?想像と言って欲しいな!」
「やだぁ、サラザールってば。僕のことお嫁さんにしたいだんてっ!」
「いやいや!!それこそ妄想だろうがッ!いらん!嫁になれん!」

くねくねと身をよじらせて勘違いに照れるヘルガに生ぬるい目で一瞥。妄想モードなヘルガは手が付けられない。ほっとくのが一番なのだが、どうしても突っ込みをしてしまう、似非関西魂。

「ロウェナァー、ヘルガ!サラザール!」

ゴドリック登場。手にはてんこもりに盛られた食べ物の山。

「貴様、太るぞ」

露骨に顔を顰めてロウェナが言う。

「僕はたぽたぽしたお肉に触りたーい」

ヘルガは妙なフィチだ。



■□■



そしてそれは、あまりに日常の中で簡単に行われた。
珍しく俺の部屋にやってきた母上さま。ノックもなしに開け放たれた扉のから入ってきた母上さまを向いいれようと姿勢を正した俺に、


アバダ・ケダブラ(Avada Kedabra!」




緑の閃光が射抜く。




……――ああ、俺はここで死ぬなんて冗談じゃないっスよ。


「落ち零れは必要ないのよ、サラザール…」

母上さまはベットの上で仰向けで倒れた俺の死体を見下ろしながら冷徹に言い放った。うん、まぁ、でもね



……実の母親が息子を殺すってどーよ?



「そりゃ、残念ッス」
「ッッ!?」

突如として死体ではなく、後方から聞こえた声に母上様さまは振り返った。
その表情の怖いこと、あれじゃん、ゾンビとか死喰い人とかそういう人に会ってしもうた系のさぁ…ものごっつー、形相。折角の美しいお顔が台無しですよ!……ってね。

母上さまが呪文を唱えるよりはやく、俺のはなった呪文が母上さまの手から杖を弾き飛ばした。
俺は母上さま…つーか、母って呼びたくねぇな、もう。

俺の足元まで弾き飛ばされた杖を拾ってもて遊びながら、母上さま改め女に向って微笑んだ。

「殺されるとは思わなかった…こともないです。たぶん、アンタは俺のことをいつか殺すとは思ってました…ということで、殺し返してもいいですか?」
「……どうして!?」
「いや、世の中には忍者っていう素敵な職業があるので、それを研究して「身代わりの術」を使ってみましたー…」

いやぁ、日本人って素敵な術を一杯持ってるよね。俺が覚えてるのってNARUTOのやつばっかりだけど。それらの忍びの術を魔法に転換して使えられるように俺は日々研究していたのですよ。
ほら、俺ってばサラザール・スリザリン。またの名を天才ですからっ、エヘ☆(キモッ)


命には命をってのが、戦いの基本です。ここでこの女に温情を与えて生かしておいても同じ事を再び繰り返すだけだ。俺って人間は弱いので、大変申し訳ないですが、ここで綺麗さっぱり消えていただきます。


「つわけで、命は命で償ってプリーズ」

俺は酷薄な笑みを口元に履き、俺は杖を振った。







その日から、スリザリン家の女帝は姿を消した。



■□■



へいへい!俺はすでに二十歳になっているのであーる。我が弟も十三歳。
くしくも、俺が女(母上)を殺した歳になったのである。我が弟ながら、中々に優秀だ。俺のが優秀だがな!ワハハ!

一番ウザかった母上が死んだので、俺はまぁちょっとだけ地を出しつつ、人生を謳歌している。父上も婿養子だったから女帝的母上がウザかったらしいですから、無問題!形だけ、行方不明になった妻を捜しているって感じかな。死体とか見つかってないし。

ほんのちょっぴり俺ってば疑われているみたいだけど。そこらへんに父上さまは突っ込んでこない。
まぁ、強いものが勝って弱いものが負けるっていうのはそういうことよね!うふv(ゲ、ロウェナが移った)

このころ、俺はサラザール・スリザリンの象徴とも言えるモノを手に入れた。暇だったんでスリザリン家の広大な庭(森)を薬草を探すついでに散歩しているときだった。

『シュー』

おおっと。これは噂のあれですか。

蛇。

お約束に怪我をしている子蛇を助け、俺はそのままペットにしたのです。もちろん、蛇語はしゃべれます。そうじゃねーと、意味無いじゃん。

「命名…ヘビロック。」
『なんでやねん!』

ヘビメタとどっちがいいかなぁと思ったんだけど、ヘビロック、略してヘビロクで四露死九!

「や…俺が聞きたい。なんで外国種の蛇の癖に、関西弁なんだよッ」
『知らんわ!オレは生まれたときからこの言葉使いや!』
「…蛇っていちおう、両性だったけ?」
『みりゃ分かるやろが、ボケェ!』

なんて攻撃(突っ込み)性の高い蛇なんだ!
ちっこい白蛇の冷たい腹を撫でてやりながら、こいつはこれから立派な大蛇になって千年以上生きるんだよナァと考えた。千年も経てば、擬人化とか出来るようになったりするのだろうか。(ちょっと期待。どきどき)
猫又みたいにグレードアップ。

ヘビロクは着々と脱皮し、大きくなった。家や森の生物をガブガブと食べてしまう番犬のような存在だ。蛇だから牙も爪もないけど。



■□■



さて、二十半ばに差し掛かったとこらへんから、俺たちは例の学校を作り始めた。
やぁー…めっちゃ大変だったんよ、学校をどこ作るかで。そのあたりは色々とあったんだけどここは割愛する。

というわけで、恐らくデカイ湖が眼前に広がっている森にホグワーツを作り始めたのである。これが結構かなり問題やらいろんなことが出てくるので時間が掛かった。十年掛かる建築ってどーよ。まぁ、建築材料とか費用の工面とか、そういう現実的なものがいろいろと大変だったわけだよ、ワトソン君。(ワトソン君って誰やねん!関係あらへんがな!<うっさいわ、ヘビロク!)

例のお約束として、四人はそれぞれ秘密の部屋を作った。あと、俺たち特性のマジックアイテムを宝探しの要領でとても分かりにくい場所に仕込んだり。お宝探しは子供の夢だよね!
いろいろホグワーツの中での制約を作ったり。(朧な記憶で姿現しの術は出来なかったと記憶しているのでそれとか)

なんだかんだでホグワーツは完成した。

「兄上…」
「我が弟よ!」
「あ、サラの弟じゃーん!久しぶり」
「久しいな、弟君よ」
「あ、弟ちゃんだ!相変わらずサラザールにそっくりだね!」

ホグワーツ創立記念日の内輪だけのお祝い会に俺は弟も呼んだ。
内輪ってほんっとうに内輪だけので、俺たち創立者+弟の五人だけだ。

「いい加減、私のことを弟って呼ぶの辞めてくれませんか?兄上、皆様がた」
「えー…」
「えー…じゃないです!」

弟は三十路前で、男がますます麗しくなっていく年代だ。おお、我が弟ながらスリザリン家の美男ぶりが伺えるというものだ!

「サラの弟!俺の作った歌を聴くがいい!ホグワーツ ホグワーツ学べよ脳みそ 腐るまで♪」

祝杯の酒にすでに酔っているゴドリックが俺に肩を組み陽気に歌を歌い始める。酒臭い息に眉を寄せながらも今日は無礼講だからいいか、と俺にしては珍しく広い心で許してやる。

「むしろ、貴様の脳みそがすでに腐っているだろう」
「若いうちから腐った脳みそなんて…移るから僕の近くに寄らないでね!」

歌い終わったゴドリックにはヘルガとロウェナから惜しみない嫌味が送られる。うん、惜しみない賛辞ではありえない。

「ひ、ひでえ!俺が徹夜して考えた、ホグワーツの素晴らしき校歌を!」
「んなことに頭使ってんじゃねーよ。この鳥頭」
「サ、サラまで!俺とお前の熱い友情はどこへ行ったんだ…!」
「元から無いわ、ボケェ」
「…あの、兄上?」

おお、すまぬ。忘れていたよ、弟よ。(酷)


月もかげり始めた中、俺は一人ホグワーツの塔の上に立っていた。
絶景、と呼ぶに等しい雄大なる自然の中に我ら創立者は魔法族のために学校を作った。自然の中に突然現われるこの人工物は一種の異物に等しい。
今はどこもかしこも真新しいこのホグワーツ城はこれより少しずつ汚れていくのだろう。いや、それはいい意味でだが。

星瞬く空をもう一度見上げ、あの空に瞬き浮かぶ星はさて、高貴であるのか傲慢なのかと首を捻る。
傲慢というにはあまりにも遠く、儚げな輝きで、高貴というにはちっぽけ過ぎる星屑。



さてと。

星が一つ流れるのを目を細めて見た後、俺は手ぶらで立ち上がった。

「…こんな時間になにしてるんですか?」
「うむ。ちょっくら人間界に行ってこようと思ってね」

静かに掛けられた声に、俺は動揺することなく笑って答えた。振り向けば、弟が立っている。あんなに小さかった弟がこうも大人な男になるとはなぁ…。成長って凄いぜ。

「そうですか…兄上はしっかりしているようで、どこか抜けているのでマグルに騙されないかと心配です」
「いや。俺ってばちゃんとスリザリンの長男だよ?あ、お前にいい忘れていたことをひとつ」
「なんですか?」

昔の、彼がまだ幼く、俺の腰ほどにも満たなかった頃を思い出す。子供には母親が必要だったはずだ。俺のエゴで俺は母親を殺した。

「母上は……」

甘えたかっただろう。(例え、あんな女であろうと。弟には優しかったはずだ)

「俺が殺した」

弟の表情は変わらなかった。それどころか分かっていたと平然とした様子で頷いた。俺は笑いがこみ上げた。流石はスリザリンの子。
多少の機微はあったとしても、大人の精神へと成長した今、母親ひとりを他でもない兄が殺したことはそれほどのことではない、か。

なんとも冷酷、なんとも冷淡なことか。
それこそが、我らスリザリンの血か。






「ああ、いい忘れていたが俺、お前のことそんなに嫌いじゃなかったんだぜ――…ヴィクター(Victor)」

今まで呼ぶことの無かった弟の勝利を冠する名を初めて呼び。










俺はホグワーツを去った。

(だって、もういいだろ。俺はもう、「サラザール・スリザリン」としての義務を果たしたじゃないか)





だって俺、山田太郎(仮名)だし。(笑)