死人も起き上がる慟哭が目覚めの僕の耳を裂く













れでぃーす、あんど、じぇんとるめん!

はい、あてんしょんぷりーず!!





 

ひさかたぶりだな!(きらり☆無駄にポーズ!)

俺の名前は山田太郎(仮名)。

 

素敵に無敵な一般市民。いえい!有象無象の中いれば、逃げるときは周りを犠牲にしつつ生き残れるかもしれないよな!

 

突然だが、男であるからには、女子どもに手を出してはいかん!それが日本男児と言うもの!!

常に紳士でジェントルマン!!「きゃあvおじさま素敵!」なーんて、年若い可愛子ちゃんから黄色い声で言われてみたい。ああ、いつかそんな男になりたいと 密かに努力している俺がいる。

 

あれだ、そこで重要なのは、髪の毛がハゲないことだ。

どんなに素敵☆ジェントルマンだろうが、ハゲていると格好が付かない。いやいや…ほんっと、デブの次にハゲになりたくない。

このダブルパンチは凶悪だ。それはもう、トウガラシにチリソースをかけて出されるくらいに視界の暴力だ!…せめて、せめて、どっちかひとつに絞ろうぜ…!

デブがハゲ、……きゅ、究極の選択か…!?

むかしあったよな、カレー味の○○○と、○○味のカレーのどっちがいいかという究極の選択・・・今、冷静になって考えてみても究極の選択だ…。あれだな、 これはカレー味なだけで主成分は○○○であるんだな?

……だったら、だったらおなかに優しい○○○味のカレーにするべきか…。

 

なんか話が脱線した。

さて、最初の話にもどるが、女の子にはやさしくしなきゃいけないのである。

 

間違っても、「おめぇのおんなか?」と股間に速攻タッチなんてありえない。ありえない、なんだそのうらや…いやいや、破廉恥な!野菜な宇宙人だからって許 されると思うなよっ!!

いいか、タッチはいかん。胸だってやさしく触れ。マショマロに触るように…いやいや、マショマロなんて手のひら一杯に収まるほどでかいのはない。

あれか、ここは肉まんを触るようにというべきか。強くもんだら最後、肉まんの具材が飛び出てきたりしちゃったらスクラップ映画の場面ぽくってホラーだよ な。むしろ笑えるw

だれかそういうB級コメディホラー映画作ってくれないかなぁ…いや、むしろ俺が作るべき?制作段階で打ち切り決定の幻の駄作になること決定だな。アハハ。

 

いいか!男性諸君、胸なんて膨らみは、所詮は脂肪分がつまった肉なのだよ。さらに、最近では底上げ下着なるものが氾濫し、本来のカップより一段二段はサイ ズアップが図られてるぞ!!

「私脱いだらすごいのよ!」的な胸をしていて、実は脱いだらすごくないとか、かな〜り詐欺だよな!!俺の胸のドキドキ☆を利子付けて返せ!

上から下まで高級ブランドスーツで決めてる男が、靴下と下着はユニクロでした、よりも酷いと思うんだ。

 

げ ん じ つ と た た か え ! 

お っ ぱ い は ぬ ぐ ま で わ か ら な い !

 

……おかしいな、最近俺は異常におっぱいに対する思い入れが強いらしい。

俺は、いつのまにかおっぱい星の電波を受信してしまったのだろうか…自重しよう。(俺は本来、美脚派のはずだ。…パクノダのせいかな…)(いや、ほんとは アレだ、たぶん欲求不満)

 

女の子は蝶よ花よと優しくしてやりたい。

けして、母親によるフェミニスト教育なんて受けてない。俺の母ちゃん(実母)は、太っ腹かーちゃんだった。家の中で最強だった。俺はフライパンで頭をたた かれながら育ったんだ…。(おたまよりも、星のきらめきが美しいんだぞ)

 

うん、最近の女・子どもというものは男よりも強気であると思のだよ。

むしろ、こっちがなにをしたわけでもなく、言葉と言う暴力がマシンガンのようにピンク色の可憐な唇から吐き出され、猛毒で塗り固められた言葉のナイフが心 をえぐる。

好意のかけらもない人間に対して、ツンデレ?なにそれ?の感じ永遠にツンツンしてるようなもんだ。砂漠だ。(あれはツンドラ砂漠だ…おっと、ツンドラは凍 結した荒原のことを言う。……そうか、砂漠じゃなかったのか…俺はひとつ頭が良くなったぞ!)

 

それはそれとして、まぁ、女は優遇されているなぁと思ってしまうときが多々有る。

宿泊プランで、レディープランっつーのはあるが、メンズプランなんて観たことも聞いたこともねーぞ。

女は毎週水曜日はレディーデイだかなんだかで、映画が一般1800円のところが1000円でみられるのである。おいおい、男なんて毎月1日だけだぞ、 1000円でみられるのは…あ、閃いた!女装して行ったら水曜1000円を見られるのではないだろうか。

冬の季節はマフラーをまいて喉仏を隠せばかなりいけそうだ…ちょ、待て待て俺よ、そこまで男を捨てることもないぞ。

 

ふう、あやうく道を外れるところだった。

…いやいや、昨今はニューハーフなんていう第三の性が業界をにぎわしている。それもそれでいい、オッケー。許す。俺と関係ないから。俺に被害が来たら、間 違えなく握りつぶすけど。(アレ?握りつぶすものすでに無いって話じゃねーかコレ。)

 

 

取りあえず俺がいいたいのは、女だから許されると思うな。(え、今までそんな話してたっけ?まぁいっか。山田的まとめってことで)(ああ、もちろん、同じ ことを男である俺自身に返してくれて結構)

女だからって、甘くすると思うな。目には目を歯には歯を。

 

男も女も無い。

生き物か否か、それが俺の判断基準。

 

 

 

 

 

 

 

さて、なぜか俺の鼓膜にはレクイエム(鎮魂歌)が聞こえてくる。

 

ボロ〜、ロロ〜ン、ロ、ロ〜ロ…

 

えらく死にそうな音だ。

切ないとか、哀愁漂うとか、そんなレベルじゃない。これはもう、この世のものとは思えない音だ。

 

いうなれば、天上の調べ。あるいは、地獄への導き。

はたまたは、歓喜の歌。それとも、嘆きの叫び。

 

矛盾をはらむくせに、命綱のように一本の確固たる線がある。

混沌とした音楽だった。

まさに、この世のものではない旋律。

 

……はて?

なんでか俺の目の前に歪んだ白と黒のコントラスが揺らめき映っている。 いうなれば、目のいい人間が、間違えてどの強い眼鏡を掛けてしまったような視界だ。その視界の中で、なにやら肌色っぽいものが蠢いている。

…なんだこれ?

 

ボ、ロ〜、ロロ〜ン

 

不思議な音だ。誰が鳴らしてんだ、これ?

歪む歪む、視界が歪む。腹のソコからこみ上げるどす黒く混沌とした感覚。見えていたものが見えない、渦が全てを覆っていく。ぐひ、頭が、腹が、すべてが痛 い…!!

 

音が途切れた。(いや、ちがう?俺が留めた?)

 

「…ほら、ご挨拶なさい」

 

誰かの手に導かれて、俺はふらりと立ち上がった。立ち上あがらされた。

ああ、今まで俺は座ってたのかね?

いかん、状況認識が全く出来ていない。

 

途端にさらにもまして襲い掛かる腹痛、全身の悪寒。一斉に周りから襲う拍手の音がさらにズンドコとトンカチで頭をぼこぼこにされたように響く。俺がアルミ のバケツだったらでこぼこに凹んでいる。消耗品だからって雑に扱うなよ!

 

歪んだぼんやりとした視界にはカワフルな色だけが見える。頭を押さえるようにして促されて、頭を垂れる。脂汗が酷い。動悸が激しい…。

ぐ、と手を強く手を握り締める。

力任せに握りこんだ拳は、手のひらに爪が突き刺さり痛みを伝える。…くそ!痛みで痛みを紛らわし、意識をはっきりさせようとしたのに全然だめだ…!

 

「素晴らしい!」

「こんな音楽、初めて聴いたわ!」

「なんて前衛的なんだ…!!」

 

ぐわんぐわんする頭で思い出す……なんぞこれ、この体を襲う痛みを俺は知っているぞ。

あれだ…キキョウマザーのゾル家特性ミックスポイズン…!!ちょっ、やべぇ、これは、久々に効きすぎる!!なんだ、俺の体の抵抗力が弱っているのか…?ま さか、キキョウはミックスポイズンになにか新しい劇薬を調合したのか?ミックスポイズンを上回る毒など、この世に存在するはずがなないと思っていたの に…!

 

「か、母さん…いれす、ぎ…」

 

なんで、俺にこんなに毒入れるの?俺、なんか悪いことしたっけ?俺、なんもしてないぞ!!

 

……うぐ、本格的に駄目だ…堕ち、る…。

 

意識が闇に飲まれた。

 

 

 

 

……ここはどこだ。

目が覚めると目の前には毒々しい紫と、赤い花が咲いていた。

…ん?これって彼岸花?

暑くも寒くもなく、霧のような白いもやがあたりを覆っている。どこに光源があるのかさっぱりワカラン。けれど、最低限の光はある。

 

ふと、その花畑の切れ目に河が流れていることに気が付いた。

すると、唐突にこの河は俗に言う「生と死の挟間の川」であることが思い出された。――…思い出すって言うのは変な言い方かもしれないが、ぴょこんと、どっ かの引き出しにしまわれていたヘソクリの在りかを突然思い出したような、そんな感じ。

人間、死んだらこういうところに本当にくるもんなのかねぇ…?

でも、何も違和感もなく「三途の川」…と当り前の知識として思い出す、っていうのは人間というか、生物の魂に神様が刻んだ、創生の名残かなんかなのかね?

 

ま、人間には魂ってもんがあることを俺は否定しない。だってそうだろう。魂があるから、俺はいろんな人間に憑依しているわけだし?

 

もやもやとしたこの場所では音は聞こえない。においも感じない。なのに、色だけははっきりとよく分かる。白黒のつまらない世界でなくてよかった。

いやに色鮮やかなその場所だった。

 

「ていうか、臭!なにこのヘドロみたいな三途の川ッ!」

 

俺の目の前を流れる三途の河は見ているだけで、臭そうなヘドロ色をしていた(いや、上で言ったとおり、においは感じない。でも、見ているだけで臭い。視覚 の汚染だ)。所々、腐敗した肉がくっついた骨だとかがぷかぷかと浮かんでいる…。

 

三途の川は腐敗していた。

そうか、黄泉の国にまで環境汚染の波が押し寄せているのか…。もの悲しいな…。

 

そんな切ない気持になりつつ、そこらへんに落ちている石を投げ込んでみる。

ポチャン、というよりも、ドブン、と三途の川に吸い込まれというよりは、飲み込まれ沈む石。

あれだなー、三途の川から『あなたが落としたのはこの銀の石ですか?それとも黄金の石ですか?』という川の神様だかなんだかが現れたら、それはそれは恐ろ しい姿形をしていそうだ。

うむ、聞かれたら「いいえ!落としてません!捨てたんです!」と素直に答えよう。それがどういう結果になるのかは知らんがな。

 

「ん?」

 

眼を凝らすと、その川の遥か彼岸に白っぽい影が見える。

よく、三途の川の向こうで死んだ誰々が手を降っていただとか、『来るな!』と叫んでいただとかという話を聞くが、俺の場合は…

 

「…………」

 

うん、見なかったことにしよう。

あはは、世の中見なかったほうがいいことってあるよね♪

 

 

 

 

冷や汗をかきながら、俺が、俺のいる川辺に視線を戻すと、大きな樹があった。その根のあたりに、おんぼろを頭からすっぽりとかぶって、顔がまったく見えな い人の大きさをしたものが二人。

二人、と「人」で数えていいのか分からない。だが、ふたり、そこにいつの間に気配もなく立っていた。こんな死後の世界だから、気配もなにもなくてあたりま えか。

 

つと、ふたりのうちの一人が寄ってくる。

なんだなんだ?と身構えると、

 

『ヌげ、衣ヲ、スベテ、スベテ』

 

!!!

 

はっと、俺は目を見開いた…この、この声は!!

 

 

「ド、ラえもん!!?」

 

古き良き、一代目のドラえもんの声が脳裏に響いたのだ。くそ、ドラえもん!おばあちゃんの話はなんど見ても泣けるぜ!小学五年生のくせにお色気担当のしず かちゃんも大好きだぜ!

 

てか、なんでドラえもん?

 

「はっ!?いつのまにか服がない!!」

 

ほんの一瞬のトリップをしていたうちに、俺の身ぐるみはすべて剥ぎ取られていたのである。パンツも。

お、おのれ、なんたる早業!パンツがどうやって脱がしたんだ!…あ、あのパンツ、昨日ちゃんと換えたっけ?汚れてたらごめんね…。

いや、違うだろ、俺!ここは俺のパンツまで剥いでいった、痴女を非難するところだ!

 

俺の服を脱がしたやつ…脱衣婆(だつえば)は、用が済んだとばかりに俺を放置。マッパで放置プレイってどんだけ鬼畜!かといって、周りには誰もいないの で、前を隠すのもむしろ恥ずかしいので堂々と立っている。むしろ、仁王立ちの方向で。

…超格好つかないがな!いい、だが、それが男だ!漢と書いて、おとこと読ませろ!オスと読んでくれてもいいぞ!

 

『はいよ、じいさん!』と、いう感じで、脱衣婆は、もう一人の影に俺の着ていた服を渡した。すると、『ほいとも、ばあさん!』という感じで、もう一人が受 け取り、その服を大きな樹にかけた。うむ、服を受け取ったほうを懸衣翁(けんえおう)とでも呼ぼうか。ふたりはきっと長年連れ添った夫婦なんだな!コンビ ネーションに無駄がない。きっと、懸衣翁の声は、のび太くんなのだ。

 

服を掛けたとたんに、その枝が…激しく上下運動を開始しただとうっ!!?

 

ちょっと傍目に見てもおかしな感じで枝がびよんびよん上下運動をする。

え、やばくね?あれ、もうちょっと激しくなると折れるんじゃね?

 

そう俺が危惧するぐらいだったのだが、脱衣婆と懸衣翁は二人して、両手を上げ、あたふたと大木の周りをぐるぐると駆け回っている。さながら、キャンプファ イヤーの目玉のかがり火を前におおはしゃぎする子供のようだ。枝が揺れるのがそんなに面白かったのだろうか。俺にはワカラン。

 

ぴたり、と枝が今までの激しいシェイクが嘘だったように止まった。

同時に、脱衣婆と懸衣翁も電池が切れた人形のようにピタリと止まった。そして、俺のほうに顔を向けると、さっとそらし、二人してひそひそと寄せ合い話会い を始める。

な、なんだ。俺の陰口か!本人の目の前で陰口とはどういう了見だ!正々堂々俺に立ち向かえ!

べ、べつに気になってなんかないからね!(ツンデレっぽく)

 

……ところで、なんで俺ここにいるのだろうか?

死んだ?死んだのかな、やっぱし?だが、さっぱりと原因がわからん。

ともあれ、この三途の川を渡って、閻魔様の前に引き出されるのかなぁ…やべ、三図の川の橋渡しってお金いるっけ?三文?六文?てか、身ぐるみはがされたん だから、お金なんか持ってるわけないじゃん。

俺、馬鹿なの?死ぬの?死んでるじゃーんvv(笑)

 

「うわ、なんだ、おい!」

 

突然、爺と婆が俺を担ぎあげた。わっしょいわっしょい、わーい!胴上げだー!入学おめでとー!!と、ひとりボケをしている間(随分余裕があるな、俺。これ も、山田が山田である所以だな)に、

 

 

ドボン。

三途の川に放り込まれました。(作文風)

 

え、なにこの粗大ゴミ(冷蔵庫)を川に投げ捨てるような扱いは?

ふざけんなよ、バーロー!!

 

いきなりの出来事に、俺はあっぷあっぷと沈まないようにしていた。

泳いで岸べに戻ろうにも、タールのようにまとわりつく。もがけばもがくほど、体にからみつく。

あぷ!口に入った!味がしないけど、変な固形物も入った!これなに!ネズミの死骸か!?ううっ、ペッ、ペッペ!!

 

ゴウゴウ ゴウゴウ 

 

川のうねりが深くなる。

あたかも、川自身に意思があるかのように、俺の脚をつかみ、引きよせ、淀みきった川底へと引きずり込もうとする。大量の汚水が俺の口から鼻から侵入し、気 道がふさがれ、徐々に水面に口が出ている時間のほうが少なくなる。空気よりも、水が肺に送り込まれる。

 

うげ、マジ、洒落になんなくなってきた…!!

 

こ、このままでは… 

 

 

ドラえもんならぬ、どざえもんになってしまう…!!

 

 

 

「あっ…プッ………」

ゴウ ズブズブズブ

 

 

渦まく螺旋が、ひとわきうねり俺を水面へと引きずり込んだ。

 

 

……

…………

 

―――見よ、地獄をめぐるハグレがおるぞ

―――餓鬼どもよ、必要ならば喰らいて味見せよ

―――畜生どもよ、牙をもって切り裂くか

 

―――ほう、はてさて、おんしは人間なのか、(はじかれた、か?)

 

―――それは、天すら昇る可能性、いや、それも堕落ひとつか、

 

いく

 

行く

往く 逝く 好く 

 

良く

 

生くがよい

 

 

 

――  ■ ■ を 廻 れ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が、覚めた。

 

「ああ。ああ!目が、目が覚めたのね、わかる、ねぇ、あたしのことわかる?パパ!だれか、早く来てっ!!」

 

誓って言うが、俺はその時無意識だった。

体に巡る毒、ただならぬ、脱力感、覗きこむ誰かの顔…無条件で力を抜ける安全な家族ではなく、全くの見知らぬ他者…そして、弱っている俺。

 

瞬間、俺の中で一瞬にしてスイッチが入った。

 

俺を覗き込むあまり、無防備にさらけ出された細い首に、痺れと吐き気、腹痛と頭痛を自己暗示で一時的に押さえこみ―――殺しにかかる。

他人の前に、弱った自分をさらけ出しているという状態を”命の危機”と判断し、とっさに身に付いたゾルディクのしつけが現れたのだ。

 

「ナぁッ…っ、ヤッ…放っ……!」

 

相手を俺の全体重をかけて突き飛ばし馬乗りまたがり、ぎりぎりと両手で細首を締め上げる。

苦しげな息の下、少女は苦しさに喘ぐ。俺の腕に、力の限り爪を立て、引っ掻き、必死になって逃そうとする。(――逃すものか、殺す、殺す、ただ殺す)

んん?おかしいな、俺の体なのに、上手く動かない。いやに、首を絞めている手が小さい気もしないこともない。いや、でも、

 

――…大丈夫。殺せる。

 

まったく。この時のおれはどうかしていたのだ。

 

「……ッ!ハヤト!貴様何しているっッ!!」

「―――ッ」

 

ドンっと身体を突き飛ばされて、俺の体は吹っ飛んだ。壁に背中をしたたか打ち付ける。ぐ、と息が一瞬止まる。くそぉ、誰だ!

 

「大丈夫ですか、お嬢様!」

「ガッァ、グ、ゴホ・・・」

 

薄目を開けて声のほうを見る、大柄の男性が少女を助け起して介抱していた。少女は、苦しそうにせき込んでいる。殺し損ねた、くそ、何て失態だ!あんな力の 弱い子供一人殺せなかった!!

何たる恥か!!

 

「なんだ!どうした!」

「旦那さま、お嬢様が…、!」

「ビアンキ!?どうした、何があったのだ!」

 



 

「ビ、アン、キ?」

 

なんですかその、ビビアン・スーに似てたらいいな、っていう名前。と、普段の俺ならわっはっは!とボケて笑う。

俺の呟きに反応した少女が、おびえた目で俺を見やって、大人の影に這うようにして逃げこむ。微笑ましいなーと、無力に対するちびっこを見て、普段のおれな ら、微笑ましいなぁ…と思っていたことだろう。

 

だが、久々に感じたのは

 

―――…純粋な、殺意。

 

ああ、まったく、この時のおれはどうかしていたのだ。

今思い返しても、はらわたが煮えくりかえる。

 

――なに、可愛らしく首を絞めて殺そうとしていたのか。

――殺せばよかった、もっと、簡単に、単純に、明確に。

――この、子供の伸びた爪を思いっきり首筋に突き立てて、頸動脈を切り裂き!!

 

 

 

(ああ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺してしまえ、わが命をもてあそんだ、この小娘を!!)

 

 

 

 

 

―― ああ、なんたる無様!

 

 

 

 

 

□■□

 

 

 

 

 

あーらたしいー朝が来た♪

現実的な意味で、新しい世界での新しい朝です。朝日がまぶしい!朝日が緑色にみえます!(これ、どんな幻覚?)

 

やっほう!

気分を変えて、明るくいこうぜ!!なんかおかしかった!ちょっと前までのおれ、おかしかった!いつもおかしい、まんせー!

 

 

 

 

俺の名前は山田太郎(仮名)。

うわーいうわーい……神様なんて大嫌いだ!死ぬといいよ!

俺、いつか神殺しになりたい。神様って、意外と世界にたくさん転がってるよな。(ちなみに俺は、八百万の神派です!すべてのものに神様がいるt思いま す!!)

 

一家に一台冷蔵庫ならぬ、ひとつの世界に神様ですよ。

この際、自称神様でもいいや、ねぇ、ちょっとうちの裏庭に来てくれる?シバクから。フルボッコしちゃうよー。ボッコボコだヨー。ミンチにしちゃうぞ☆

俺のリミッター解除しちゃうよ?スーパーサイヤ人になっちゃうよ?今なら俺、クロロにでも勝てちゃう気がするぞ☆(これは言いすぎですね、すいません、調 子のりました)

 

はい、最悪でーす!ここ、近年見ないほど最悪でーす!

最高ですかー!

最悪でぇーす!!

 

 

なんでなんでなんで、獄寺隼人になってんの…、獄寺隼人になってんの…orz (大変重要なことなので二度いいますた)

 

 

 

 

空気読めない人、最高にヘタレ、待ての出来ない駄犬、忠犬ハチ公、(悪い意味で)シスコン、間違った脳みその使い方、どこでもダイナマイト男(四次元ポ ケット?ねぇ、ダイナマイトは四次元ポケットに入ってるワケ?)

 

…そして、極めつけは、自他共に認める、モーホーだということだ!

 

いや、実際モーホーかどうか知らねぇよ?けど、あの沢田綱吉に対する態度はキモイんですよね。なに、あの情熱、キモイ。ホモでしょ?

いや、一般読者な俺が読んでて「こいつ、ホモじゃね?」と普通に感想持たれる人間ってどーなのさ。そういうのは、腐った女の脳内変換だけで十分なんだっ つーの。

なんで、一般読者の俺が「あれ?こいつホモじゃね?」って思うんだよ。マジ、終わってるよ…。

 

ていうか、大変申し訳ございませんが、俺ってば漫画のREBORNってものが好きじゃない。いや、好きな人もたくさんいると思うけどね、なんていうか…あ の漫画、根本的におかしいと思うのである。

マフィアなんて黒い商売のくせしやがって、なんかマフィアを正義の味方かなんかと勘違いしているような雰囲気を醸し出しているもが気に食わない。

 

(正義なら正義を、悪なら悪を誇れ!)

 

なんつーか、あの、大空とかぶっこいて仲間を救おうとして(救えると思ってんの?馬鹿じゃね?)、何一つ救えなそうな少年(未来編では青年?)が嫌いなわ けだよ。

 

ああ、嫌いだ。

(根本が間違ってるのだ!マフィアを主人公の位置に置いたという、ソレが!!)

 

 

――――こんな、少年ヒーローごっこの世界、大嫌いだ。

 

 

(ならば、消そう。覆い隠そう、全てを、総てを暗黒で。空という存在すら忘却させ、天も地上の挟間も見えぬ真の暗闇で)

 

 

俺(山田/スリザリン/ゾルディック)が。

 

(――――滅ぼす)

 

 

 

さぁ、悪の華でも咲かせて、蹴散らせ!!!

 

 

■□

 

 

 

……へい!豆腐一丁!!

もっとクールに行こうぜ、ベイビー山田(仮)!

最近では、熱血は流行らないのである。ほら、ここにある巨大豆腐に頭をつっこんで!頭冷やせよ、俺!

なにちょっと、俺ってばつえぇええー!状態で無理なこと考えてるのか。

頭冷やせよ、中身は山田太郎(仮)だろう?どっかの最強主人公とは違うんだぜ。中学二年生はとっくの昔に卒業したハズだろ!

 

「それにしても…これからどうするかが問題だ」

 

ここどこの王家?あれ?俺ってば王子様だっけ?切り裂きベルちゃんだったけ?と勘違いしそうな部屋のなかで、俺は頭から布団をかぶって物思いにふけった。

せんべい布団ではなく、やわらかくてふかふかだ。

だが、俺は柔らかくて身体が沈みこんでしまうような寝具よりも、硬くて背骨が伸びる寝具のほうが好きなのである。ああ、要するにせんべい布団寝。うん。

 

さて、どんなに嘆いても、俺が獄寺隼人に憑依してしまったことには変わりない。

もっといい脇役になりたかった…あれじゃね?俺ってば、主人公組になるのって初めてじゃないか?

 

だってだって、サラザールとかミルキとか…その他もろもろ。

…… 正直、基本的に本篇では全然出番がないキャラクターであり、なおかつ、ちょっと主人公組と敵対存在みたいな…。存在感が薄いものばかり。(だが、能力的に はトップクラスの化けものレベルという、ちょっとだけ山田に優しい…)(そんな優しさいらねぇ!一般市民で十分なのに!)

 

 

 

 

 

■□■

 

 

 

 

 

いつでもくよくよとしていても始まらない。

ポイズン・クッキングの毒により三日三晩生死の境をさまよった末、正気を取り戻した俺、山田太郎(仮)ならぬ、獄寺隼人は、その後の療養期間を終え、城と 言って差し支えない家の中を探索することから始めた。

家には大勢の召使たちがいて、それとなく俺のことを監視している。

 

「かくれんぼをするぞ、者どもを集めろ、セバス!!」

「おぼっちゃま、かくれんぼなどと…それに、わたくしはセバスという名前ではありません、ヴィンチェスラオです。」

「ヴ…ヴぃ……呼びにくい!セバスでよいだろう!(舌かむわ!ぼけぇ!)」

 

俺はそのすべてに気がつかないふりをして、いかに効率よく屋敷を探索するかを考え、子供なんだから、ここは子供らしく、かくれんぼという安直な発案をし た。

いや、だってほら、これで変な所に入り込んでも「えへ☆間違えちゃった」で誤魔化すことができるだろう。たぶん。

 

まず、ここでの俺の立場を把握した。

原作でも、獄寺隼人本人が言っていたが、俺(獄寺隼人)は日系二世を母に持つ、妾腹だった。もともと、母親がピアニストであったためか、音楽の時間に慣れ 親しみ、どちらかといえば物静かな子供であるというのが、召使一同の見方だ。

妾腹の子供のため、家族内での地位は高くない。大富豪マフィアのひとつであるこの家の跡継ぎにはならない…いや、なれないだろう。

ただでさえ、日系であるというだけで周りの人間から軽んじられている節がある。また、実は俺は長男ではないしな。よっぽど長男が死んで血筋が絶えない限 り、俺の出番はないだろう。

 

「セバス、……人が集まらないので、俺とお前とふたりでやるぞ」

「……ええ。では、私が鬼でよろしゅうございますね?では、60秒数えます。レディ・ゴー!123456789…」

「え、ちょ、はや!数字数えんの早すぎ!」

 

高速で数を数え始めたセバスにビビりつつ、俺は脱兎のごとく駈け出した。

ところで、二人でかくれんぼって、これなかのいじめ?

 

てか、いじめ(断言)。

なんというか、このおうちでの俺の立場って、本当に空気に近い。俺、空気wとか言ってる場合じゃない。リアルだと、へこむ。

 

そんな俺に唯一専属として与えられているのが執事のセバス。

…や、正式名称ヴィンチェスラオという、ちょっと噛みそうな名前の男だ。てか、実際舌を噛みそうになったのは一度や二度じゃないのである。あれか?わざと 発音しにくい名前にして、俺に舌を噛み切って死ねと?(ネガティブ)

 

名目上は子守兼家庭教師兼護衛という三足わらじだ。

年恰好は三十台前半、なんかちょっとやる気のなさそうなくたびれた感が伝わってくる、イタリア人である。たとえて言うなら、休日に一緒に過ごす彼女もいな くて、かつ趣味もあんまりなく、会社の仕事をそつなく事務的にこなすだけで毎日を生きている社会人。

うわー…いるいる、良くいるよな、こういう日本人のサラリーマン。

俺もきっとこういう風になるんだろうな、という未来像だ。

 

やる気のかけらがなかなか見つけることができない奴だが、ミルキであったときの俺(山田)が言う、こやつ、なかなかにできる男だ。(戦闘能力的な意味で)

 

…んまぁ、いちおう護衛も兼ねているので当たり前といえば当たり前だろう。

あんまり利用価値のない俺に、こんな人間つけるだけでもまぁ、くそ親父(←獄寺隼人の父親ね。俺の命がついえそうなのに見舞いにもこねぇし、ビアンキ溺 愛っぽい)にしては、温情があるほうなのかね。

 

セバスのレベルで表せば………一般人よりも毛がたくさん生えている感じ?ハンター的に表すとだいぶ弱いが、この世界では強いほうにはいると思われる。チン ピラならば軽く殺せると思う。

 

いやぁ、ほらまぁ、俺の強さの感覚って大概狂っているからね。

ハンターの世界って……ほら、強すぎる人いっぱいいるからね?俺ってば、こう見えてもシルバの背中を見て育ってしまったからな…。

男は黙って背中で語れ!男は黙って四回転!!

 

また、この世界全体の【強さ】のレベルがいまいちわからない。最強ってどのくらい?俺の最強基準は、シルバだからそのへんシクヨロ☆

あれか?最強=虹の子供たちか?

 

…出会う機会があったら、見ておこう。

そうすりゃ、強さの基準が明確にわかるからな。

 

 

「それにしてもでかいな、この城…」

 

 

城の中を走りながら、ぽつりと漏らす。

人が普通に生活するにはでかすぎる住処だと心底思う。逆にこんなに広いと無駄な部屋が多すぎて有効活用ができない。無駄だ、無駄過ぎる。どうしてこう、無 駄に金が有り余っている奴らの家はでかいのだろう。スリザリンしかり、ゾルディックしかり。

…いや、ゾル家の家自体はそんなに大きくはなかったな。

かの有名なベルサイユ宮殿と同じで。無駄に庭の敷地面積が森だっただけで。屋敷自体は家族で暮らすのにちょっと大きいかなぁというぐらいで、質素だった。

 

獄寺隼人という少年について記憶を探る。

ダイナマイトが武器。タバコ、ボス命。

 

とりあえず、ダイナマイトは持ち運ぶのにこの上なく不便だ。さらに、ダイナマイトは繊細な作業には向かない。火薬による爆発範囲が強すぎる。もっと普通に 拳銃でいいと思うんだ。

普通のマフィアにゃ肉体戦なんてほとんどないし、あるのは銃撃戦ぐらいだろう。

…まぁ、そんなこと言っても、意外に剣とか刀とかナイフとか幻術とかで戦ってたような…てか、マジおかしいよな。なんで基本的に1対1で戦ってる場面が多 いわけ?乱戦ってないの?

 

 

ああ、それと、ちょうど俺が入れ替わった時期は、獄寺隼人のピアノの発表会にて、初のポイズンクッキングを受けたという、例のいわくの日だった。

あはは、獄寺隼人ったら、実はポイズンクッキングに耐えられなくて、死んじゃったみたいですヨ。

 

あれ?おかしいな?獄寺隼人は生き残ってトラウマになるだけじゃないのか?

うっかり死ぬってどんだけwwと笑いとばしてやりたいが、これがなかなかポイズンクッキングは馬鹿にならない。マジ、死ぬ。(許す!キキョウの毒を飲んで きた俺が許す!あの毒は耐性のない人間には一発であの良い生きだ!)

 

「ハヤトさま、どこですかぁ〜」

 

遠くのほうで声がする。やべぇっす、セバスもう来たのか!!

 

「いかん、探検に夢中になっていた!隠れねば!!」

 

きょろきょろと周りを見渡し、手近なドアを片っ端から開けようとする。

さて、かくれんぼで城の中を動くことで何を探そうとしているのかというと、「こんなこともあろうかとおぉ!」と、作られているはずの秘密の抜け道を探すこ と。

あと、【秘密の部屋】を探すこと。【秘密の部屋】っていうのは比喩だが、これだけ大きな城だ。使われてない、あるいは存在を忘れられた部屋が探せばひとつ や二つ見つかるだろう。そこに、自分のテリトリーを築く!!

 

わーい!秘密基地なんて、子供心にわくわくする響きだぜ!

俺は子供心を忘れない、永遠のピーターパンだぜ!!(二十歳すぎたらいい加減にしろよ、と周りから思われても気にしない)

 

「はい、見つけましたよ」

「えッ!?ちょ、俺まだ隠れてないんですけどッ!?」

「遊びの時間は終わりですね。こんなくだらないことしてないで、さっさと勉強しましょうね」

 

………勉強。

ああ、今の頭脳では勉強なんてちょちょいのちょいだぜ。しかし、実際の俺(山田)の脳の出来と比べると毎回そこはかとなく哀しくなるんだよな…。

結局のところ、秘密の部屋なんて都合のいいものは見つからず、城の探索は終わりとなった。

まったく収穫がなかったわけではなく、この身体があまりにも軟弱だということが分かっただけでもよしとするべきか…。なんだこの体力がないもやしな身体 は…。まったくもって、使えない。

不測の事態に備え、さっさと肉体の強化を図らねばならん。

 

 

■□

 

 

あれから一カ月。

中庭の続きの一角には別塔があって、小さな書庫になっている。俺はそこからの毎日適当に本を選んで読んでいる。憑依のいいところは、デフォで憑依した人間 の母国語がすらすら読めることだよなぁ…。イタリア語とか。英語以上に意味わからん!

 

 「おう、隼人!なにしてんだ〜?」

「シャマルのおっさん…」

「おっさん!?お兄ちゃんだろっ!」

「いや、俺にしてみりゃ、あんた十分おっさんだろ。無精ひげ生えてるし…うっわーむさい」

「ひげはおしゃれだっつーの!分からいでか!てか、お前なにやってんだ?」

 

俺の手元の本を覗き込まれる。見られて困るものでもない。

ただ、書棚にあった歌集だ。

歌詞を読んでいると、なんとなく面白い。

 

「おっさんこそ、なにやってんの?珍しく女いねぇじゃん」

 

わざとらしくシャマルの周りを大げさな動作で見やる。この男、城に来るときは毎回違う女を連れているのに、今は隣に女がいない。

なんで、こんなおっさんがモテモテなのか不思議だ。まぁ…悪い人間じゃあないことはわかるんだけど。

どうなの、こんな無精ひげで、だらしなさそうな男がいいって、女ってそうなの?女ってダメヲが好きなの?

 

「女はいま、お色直し中だ」

「けっ、毎回女とっかえひっかえで、チンコ乾く暇もねーんじゃね」

「まぁなっ!って、ガキがモロに言うな!意味わかってんのか?」

「はいはい。うるさいなー俺の読書の邪魔しないでくれる?」

「おまっ……ちと見ない間に可愛げがカケラもなくなったな…何読んでるんだ?」

「ん?まぁ適当に」

 

そんなこんなで毎日読書の俺ってかなりの勉強家。

書庫の本を全て読みつくす勢いで、読書に励んでいる。サラザールの記憶は使えるが、ミルキとしての記憶は使えない。

なぜなら、ハンター世界は異世界であり、生物・植物体系などがまったく異なるのだ。サラザールの世界は魔法世界があるかないかだけの、並行世界。薬物や生 態系、歴史などはほぼリボーン世界に通用する。

 

御多分に漏れずに、獄寺の脳みそはよく出来ていて、ほとんどのことは一度読めば覚えられる。おそらく、瞬間記憶に近いことができているんだろう。

お陰で俺は助かってるがな。

なんども分厚くて古臭い本を読まなくて済む。俺もこの頭脳が大学の試験の時にほしいぜ…ああ、大学の前期試験はうつだ…。

パタンと、本を閉じて空を見上げる。ああ、青空だなぁ…鳥が飛んでるよ…平和だなぁ。俺も、空飛びたいなぁ…。

 

 

「なぁ、おっさん。俺、家がほしい」

「はぁ?」

「俺の家がほしいんだっつの。この家、嫌い。どうすりゅ、俺の家が手に入ると思う?」

「そりゃあ…どっか奪うとか?」

「奪う…蜘蛛かよ!」

「は?」

「いえいえ、続けてください。奪うって、誰かの家を?」

「どっかのマフィアの城、殲滅した後は、そこは手柄を取ったもののものになるんじゃねー?」

「そうなの?」

「そうだなぁ、そんなかんじじゃねぇの?まっ、ガキにゃあまだまだ無理だろうけどなぁ!」

「ふ〜ん…」

 

確かに、魔法も、念もない俺には無理だろう。

あーあ…うん、どうしようかな。

 

 

 

この世界は、なんか気?オーラ?とかがあるというのは、漫画を読んで知っている。

それは、まず、「炎」という形で表れている。そう、当初はボンゴレの血を受け継ぐもののみに現れていた「死ぬ気の炎」。

 

さて、みなさん、皆々様!「死ぬ気の炎」とはなんだろう。

さまざまな言い方があるだろう。

例えば、気、オーラ、闘気、覇気、プレッシャーなどなど。俺はこれらのものすべてを簡単に表すならば、特殊なエネルギーを放出することだと思う。それは、 目に見える形、あるいは見えない形とさまざまな形だ。

漫画を例に挙げれば、戦闘時には多くの人間が他者になんらかの威圧を与える描写に使われている体全体に陽炎のようななにかをまとっているようにみえるアレ である。

 

このエネルギーは、読みかえれば誰もが持っている生命エネルギー「オーラ」…すなわち、「念」を操る能力となんら変わらないと俺は考えている。

最終的にはだれもが使えるようになっていたことから考えても、正直なところ「念」よりも劣化した力の具現、と俺は判断した。(あまりにも大衆化し過ぎてい る)

 

ほかにもいろいろと劣化と位置付けたのには理由がある。

常時意識して何かをする、ということにはまった優れない点や、自らが何かを生み出すということができない点(匣を使うという点もまた、もともと中に存在し ている原型があると考えれば、また違う)、なにやら一時強制的に炎を目覚めさせる術があることなどだ。(変な薬を飲んだら、炎宿している子、いたよな?)

 

まぁ、念使いは念使いを呼ぶっていう都市伝説的なものうわさがあるように、俺の周りには貴重といわれる念使いがたくさん集まっていたがな。

よって、俺はその「死ぬ気の炎」もとい、俺的には「念」を起こそうと考えたのである。

ミルキの時分では、無理やり起こされたが、今回はのらりくらりと起こしてみよう…と、当初は考えていたが甘かった。

 

そんなんしてたら、いつまでたっても習得できるわきゃあない。

 

 

もう、忘れちゃだめだぞ☆

おれは 山田太郎(仮)なんだってば☆(うざい、俺うざい)

 

 

「念」はなかなか起きない。

そもそも、この世界で「念」って使えるのか?とお不安になってくる。世界の法則とか、そういうのが違うんだったらどうしよう…。

 

毎日無言で瞑想していると、屋敷の連中からはますます根暗の自堕落、やる気のない子供だと思われ始めた。というか、ヒッキーです。ここ数か月、使用人の前 にはでていませんヨ。

部屋にトイレもシャワー、簡易キッチンもついている。気が向いたときだけご飯も自分で作る。

世の中、ネット通販という素敵なものがあるので、それを送ってもらっている。

 

それも直接うちに届くんじゃなくて、一旦別のところに送ってから転送してセバス経由で受け取っている。ここも名の知れたマフィアが住む城。爆発物でも仕込 まれたら怖いからな。

 

「おぼっちゃま、密森より宅配物が届いてますよ」

「おー。」

「洗濯物も出しておいてくださいよ。ああ、それから北の方がおぼっちゃまのことを心配していましたよ。少しぐらい顔を出してあげたらどうですか?」

「洗濯物…ああ、あった。これをヨロピク。母ちゃんには心配するなと伝えておいてくれ。俺は元気だ」

 

北の方っていうのは、俺の母親の別称ね。本妻じゃないから、奥様とは言えないのだ。

ドアから洗濯ものの籠をセバスに押しつける。パンツは毎日替えているから、綺麗だヨ!嘘じゃないヨ!

 

「相変わらず、細いですがねぇ。引きこもりもいい加減にしてくださいよ、いくら旦那様と奥様がうるさく言わないからって…」

「小言はいい。用が済んだなら、早く出ていけ」

 

ちゃんと瞑想だけじゃなくて、体も動かしているんだけどなぁ…。

主に深夜だけだけどな。引きこもりの俺の部屋の窓から外に縄を出して、部屋から出て体力作りに励んでいるのである。

毎日がちょっとしたロッククライミングである。

 

一人での訓練なので、要領が悪いことは否めない。それは仕方がない。だが、ゾルディックだったころの訓練方法は大変俺の役に立っている。

 

ありがとう、ありがとう、ゾルディック家!我が愛しき家族よ!

俺(山田)の魂には、間違えなく、ゾル家の総てが刻まれたなり!!

そう、あんなに拷問まがいのことを魂に刻まれたのだ。これでちょっとは俺の身になってないなんてことはない。(反復否定)

 

かつてのミルキであったときの練習方法により、俺はメキメキと暗殺者としての力をつけていったのである!!

 

 

……な〜んていうのは、全くの嘘です。でこっぱちです(ハゲてねぇけど)。嘘八百の八百長なみです。

 

訓練はしていますが、全然成果があがっていません。

いやぁ、元はいいんだけど、なんかこの身体、全体的に動きが鈍い。

ミルキを基本として考えると、全然なのだ。

全ての動作に対して、俺が考えているのと二拍、三拍の遅れが目立つ。

身体をスムーズに動かすため、型を地道に反復練習してるのだが、一向によくならない。なにこれ、接続不良ですか?

 

ごっくんったら、立派な暗殺者になれないぞ…体育で5も取れないぞ。

いいとこ、体育4のレベルだぞ。(五段階評価で)

俺(山田)だったらできないことでも、獄寺スペックのおかげで大概の無理なことはできた。(俺の体育の成績は3である)

だが、それは一般人に毛が生えた程度で、超人!な感じはまったくしない普通の子供レベルなのである。

……獄寺隼人の身体能力スペックに軽い絶望を覚える。

 

ほんと、頑張れば頑張るほど身につくことほど素敵なことはない…なのに、頑張ってるのにちっとも成果が上がらない。

マジつかえねーな、コイツ(と、鏡の中の獄寺隼人の姿に対して思いっきり冷たい目を向けてみる。痛い!なんか、自分でやってるのに、自分でマジ痛い!そん な目でみないでぇええ!!)。

(たまたま後ろにいたセバスが、思いっきり引きつった顔で鏡の中の俺から目をそらした。や、俺はセバスをにらんだわけじゃないからネ!)

 

そんな儘ならない、わが身を痛めつけ、練習加減を間違えて明け方まで失神していたときとかあるけどな。

 

さて。話は変わるが、冷静に考えてみると、家族愛は一種の洗脳によって刷り込まれる部分が多いと思う。

まぁ、それは社会の成り立ち総てに言えることだけど。大きな世界の仕組みの中の小さな家族という組から始まるのだ。

 

父と母はもう、しばらく見ていない。

ビアンキは引きこもりの俺を心配して、何度も扉をたたいたが、俺は断固として無視した。時たま、扉の前に異臭を放つ食べ物が置かれている。

……ビアンキによる、好意の差し入れだ。

ドアの隙間からその匂いを確認すると、俺はそれを部屋に引き入れる。

 

そして、意を決して食べる。

 

「ごほわにwないおふぉあんmうぃおえ」

 

もはや、何を言っているのか自身ですら判断できない呻きをあげて、食べる。おえぇぇええと、胃液がせりあがってくるが我慢だ。三回だけかみ、残りは全て、 用意していた牛乳で流し込む。

なんの拷問だこれは、と心の底からそう思う。俺ってマゾなの?それはないない、

 

だが、毒物への耐性をつけるにはポイズン・クッキングを定期的に摂取するこの行為は、将来において役に立つだろう。立たなかったら、俺涙目wってどころ じゃねーぞ。ビアンキぶっころす。

スリザリンであったときも、ゾルディックであったときも、俺はつねに毒物を摂取しながら成長してきた。だから、まぁ、こんな風に憑依している限りは、予測 できる事態について対策を練っておけばいいという。

こんなこともあろうか!という決め台詞を叫びたい。

 

俺の調子については総てセバスを通して通達してある。てか、ここ数年ちゃんと顔を見たのって、セバスしかいないんじゃねぇの?

 

獄寺隼人の実母についてだが、なんか、俺のイマージでピアニストって一本芯がある、毅然とした人のイメージがあったんだよ。なんか、我が道を行く人ってい う…。

確かに母ちゃん、ピアニストとしては凄いけど、人間としては…ちょ、どうなの?みたいな…。

綺麗な人だし、心配そうに俺の顔をなでたては綺麗だった。白魚のような手をいうのはこういうことをいうんだな、という感じ。でも、ピアニストらしく指先は 鍵盤を打つために硬くなっていた。

優しくておたやかな人だけと…。なんていうか、俺はこんなタイプの母親をもったことないので、分かりにくい。

 

スリザリンおよびゾルディックの母は両方とも自分の心に素直に動いていて、分かりやすかった。

 

一言で表すならば、情熱の焔の女。

 

でも、この人(獄寺母)は逆に自分の中に秘め過ぎていて、表面は白だけど、内面はドロドロと真っ黒な鬱憤がたまっていて、そこから少しずつ狂っていきそう な危うさがある。(いや、実際にはもうだいぶ精神的には追い詰められている印象がある。愛人という、不確かな立場だからか?日本人ということで、この人も 周りの召使から格下扱いをされているのかもしれない)

 

…ううん、あの母ちゃんって、どうしていいのか分からない。仕方ないので放っておこう。向こうからも会いにこないし。(最初の見舞いなどで、顔を合わせた のは三回程度か)(ようするに、俺のことどうでもいいんだよな)

 
 



(ああ、俺だってお前たちのことなんてどうでもいいさ。家族?笑わせるな)





※ミルキの筆が止まった(念能力が浮かばない…)ので、リボーン。主人公組嫌いな感じになりそうです。ところで、オリキャラって…どのぐらいだしていいの でしょうか?山田は極力オリキャラなしで進めていた(つもり)なので。