やあ、俺は山田太郎(仮名)改め、サラザール・スリザリンと申す。
御歳は十五歳である。盗んだバイクで走り出す年頃である。(窃盗罪で捕まるな。しかし、この時代にはバイクもねーがな!)
その俺は、取りあえず家出する計画を立てた。さあ、出かける前にはトイレで用を済まさにゃな!とトイレに入ったら森に居た。
意味分からん。
「……アレ?なんでトイレのドア開けたら森に出ちゃうわけ?え?なにコレ、何時の間に俺のうちは野外トイレになったのさ。え?」
異常事態にかなり混乱し、俺の脳みそはパンク寸前。
『なんやねん。どないしたん?』
「おお、ヘビロク!トイレに入ったはずが、俺は森にいる!」
『なんでやねん!』
「う、突っ込みはありがたいが、今はそれどころじゃない。マジに森だ…」
ドアの中に一歩踏み出すと、土の柔らかい感触が足の裏に伝わる。おお、普通に森だ…。
潜ったトイレのドアの方を向くと、どこにでもあるような木に、ドアが張り付いていた。なんだろう…例えるなら…どこでもドアが樹にくっついている感じ?
開けっぱなしのドアの向こうには普通に俺んちが見える。 「…ここって、俺んちの森かなぁ…」
呟くと、すぐに返事がある。
『ちゃうな。気配がちゃう』
「んじゃ、どこだよ」
『オレが知るかいな、シュー!』
ヘビロクはオレの腕に巻きついて、服の隙間から首元に顔を出す。
シューシューとした蛇の排気音はなんとなく背筋がゾクゾクする。ヘビロクの頭を撫でてやりながら、俺は一旦部屋に戻った。
もちろん、トイレのドアは開けっ放しにしてある。
急いで家出用荷物(最小限)を背負って戻る。
「ヘビロク。これはきっと神様がここに家出しろってことなんだ。だから、油断せずに行こう!!」
『アホちゃうか!』
ペッペッと、もしもヘビロクが人間だったら唾を吐いている感じだ。そんなことも気にせず、俺は森の中へと入ってった。
(もちろん、この場所への結界&目暗まし&目印はばっちりしてから)
■□■
「君。誰?侵入者だよね」
「…うーん。こう来たか…吃驚桃の木って感じだ」
俺は両手を上げて男と対峙していた。さて、この男は誰でしょう。
ゴドリックとかヘルガ、ウェロナなんかは名前は知っていても顔を知らないから紹介されるまで誰が誰だか分からなかった。
けど、コイツの顔は特徴がないというかあるというか、平坦すぎて覚えていた。ただ、ハリポタの人じゃないだけで。
「…えー、つかぬ事をお聞きしますが、君って、イルミ君だったりする?」
「そうだよ。ゾルディック家に侵入者なんて何十年ぶりかな」
「……」
サラ、笑えなぁーい。
引きつた表情をしつつも、このなんか妙に手入れのされているように見える黒髪を持つ人間。
ああ、さいですか。
お宅、イルミ・ゾルディックですか。
ここ、ゾルディック家の庭ですか。
「へぇ…赤い目に銀髪。赤い目って、クルタ族でしょ?生き残り、居たんだ」
いえ、俺はクルタ族じゃないッスよ。
「目、抉り取ってアイツに上げたら喜ぶかな」
物騒なこと言わないでくれたまえ、イルミ君。(君付けしつつも、俺より年齢高そうだけど。精神年齢は俺の方が上なはず)
「すいません。帰ります」
「帰すわけないじゃん。君、此処で死ぬんだよ」
「ノーサンキューです、アデュー!」
スチャッと手を上げて、俺は一瞬で呪文を唱える。
瞬間移動で例の木にたどり着く。
ああ、瞬間移動。なんて素敵な術なんだろう!
一回で凄い魔力を使うし、マーキングしておかなきゃ出来ないやつだけど!!
命に比べリャ、安いもんよ!!
「さあ、部屋で優雅にティ・タイムをしようじゃないか、ヘビロク!」
『家出は一時間で終わりかいな』
「うん。やはり、我が家が一番さ!」
そんなこんなで、家出は終わった。
終わり。
※web拍手再録。