俺の名前は山田太郎(仮名)。
前回は素敵に無敵にヴォルデモートを抹殺し、新たなる下僕としてリドルへと戻したりしてみた。
そんなことは山田太郎には出来ないことだ。しかしサラザール・スリザリン(in 山田太郎)ならば不可能はないのである!!
俺は俺の秘密の部屋で優雅でティーを啜っていた。
俺の秘密の部屋は、はっきり言って趣味が悪い。
なんだよ、両側に続く蛇の彫刻って…俺は捕食される蛙になった気分だよ。
まぁ、この部屋はサラザール・スリザリンとしての威嚇の部屋なので、この位がいいのかもしれないけどさぁ…。
奥まったところに本当の俺の部屋がある。こじんまりとしたここは、俺がチョイスしたもので埋められている。
床は石作りで冷たく、奥にはベット兼用の大きめなふかふかなソファ。お気に入りの書物もそれなりにおいてある。まぁ、そんなことを言ってもここで実際に過ごしたの短いんだけどな…。長い年月がたっているにも関わらず、埃はそんなに被ってなかった。
「リドルー。お前だけだよな?ここを見つけたのってさ」
「…ああ、そうですよ。スリザリンさま」
「そんな他人行儀な!遠縁とは言え、サラザールとお前の肉体に流れる血は間違えなく血縁だぜ?」
「ええ、貴方の瞳を見ればそれは分かりますよ」
「うーん…お前のその口調って、俺の弟に似てるなぁ」
慇懃無礼な敬語は我が弟、ヴィクター・スリザリンの話し方にちょっとだけ似ている。
千年ぐらい前に死んでるだろうけど。
「まぁ、お前もそこに突っ立てないで座れば?」
「結構です」
ふい、とリドルがそっぽを向く。
その、テメェ一体何歳なんだよ、もとはヴォルだろ?いい年したジジィ(俺も人の事言えないけど)が拗ねようにすんじゃねーよ。
「ああん?テメェ、俺の言葉に逆らっていいとおもってンのか?」
俺様何様スリザリン様モードで眉間に皺を寄せてガンを飛ばせば、リドルは大人しく従った。
「……座らせてもらいます」
「うむ。よろしい」
鷹揚に頷き、リドルに席を勧める。誇り高い紅茶を舌で味わいながらふと、周りを見回した。
「そういや、ヘビロクはどこに行ったんだ?あれから見てないけど…」
「さぁ?僕は知りませんよ」
「!!おまッ、お前、今自分のこと僕って言った!?」
俺は驚いて紅茶をちょっと噴出しながらリドルをまじまじと見詰めた。
「……ええ、この外見で俺様とかワシはとか言ってもおかしいですからね」
「お前すげぇな…!なんでボクっ子が俺様人間になれんだろうな…!!どこで間違えたんだ?」
いや、きっと跡部さまも昔はボクっ子だったかもしれないけど…俺様だよ?
一人称「俺様」になるって、どれだけ恥ずかしいことなのかわかってないよな、コイツラ!
「サラー!」
「…ん?誰か俺のこと呼んだ?」
リドルに聞けば首を振る。
「僕は呼んでないですよ。僕が恐れ多くもご先祖さまを呼び捨てにするわけないじゃないですか」
「ああ、そうだよな。別にリドルも俺のことサラって呼び捨てても構わないぜ?どーせ、こんな名前に価値はないし…」
俺は腐っても山田太郎だし。
「ッ!なにをおっしゃっているんですか!貴方は偉大なるサラザール・スリザリンッ!あなたの為した偉大なる所業は数多の魔法使いに語り継がれるものだ」
「つってもなぁ、俺がしてるのそんなたいしたことじゃないし」
魔法学校をスリザリン家の財産つかって作っただけだし。
「サラ!見てみろや、オレのこの姿!」
ウキウキと瞳を輝かせた俺と同じくらいの青年が飛び込んできた。
「……いや、なんとなく分かってるんだけど、どちらさま?」
「酷いわッ、自分はオレのことわからへん!」
うーむ?
眉に皺を寄せて考えたのはほんの一瞬、ここに自由に入ってこれるヤツって限られている。
俺、リドル、ヘビロク・・・
「ヘビロク?」
「せや!」
銀色っぽい長髪に、赤みが掛かった目。色素が妙に薄い。これってなんだっけ…色素欠乏症だっけ?
いや、違う!そんな話ではない!!
「ヘビロクが、擬人化したーーーーーー!!」
ぎゃー!
「ふっ!驚いたか?驚いたか?ははんっ!オレかて千年生きてる大蛇や!このくらい晩飯前やで!」
そうか、朝飯に間に合わないが晩飯には間に合うのだな!
「すごいな!ヘビロク!」
「せやろ、せやろッ!」
得意満面で擬人化ヘビロクは胸をそらした。
すげーすげー!と俺はヘビロクの周りをぐるぐると回った。人間だー!
「じゃあじゃあさ、二人で漫才コンビで売り出すってどうよ!?」
「はぁ?なんでやねん!」
「ウハァ!言い突込みだぁあーーー!人間になったら裏拳突っ込みが出来るんだな、ヘビロクー!」
「なんならこの髪振り回して顔ぶちのめしてやろか」
「痛い!それ地味に痛い!っていうか獅子舞みたいだな!」
「ワイは獅子ちゃうで!蛇やで!」
「ぎゃー!目に入った!髪が目に入った!痛い痛い!」
猛烈にじゃれあう主従を横目に、リドルといえば……
「………僕って…この人の子孫なんだよな…」
真っ白に燃え尽きていた。
さようなら、完全無欠のサラザール・スリザリン。
終わり。
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