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02-01







西暦20XX――いや、ダブルエックスなどという曖昧な呼称ではなく、ここからは正しく年号とともに伝えよう。


西暦2084年より勃発したTHE 3RD DIVISON…第三次世界大戦。
別名《 ヘルゲート・ウォー - 地獄の門戦争 - 》により全人類は三分の一へ減少した。
実質、世界の経済大国ナンバー2であったニホンも否応なく戦火に巻き込まれ、国土に甚大な被害を被った。


のち、西暦2088年に終戦。
《アークノア大調印》と呼ばれる停戦がなされた。
総人口が約二十億人になった現在でも、依然として核兵器による大陸の広範囲土壌汚染は止まることを知らず、日々の餓死者、または放射性物質による後天的死亡者の報告がされている。

各 国が互いの主要部、電力エネルギー源を潰しあったため、絶対的な電気量の不足により戦前は当たり前に使われていた高性能なネットワークの断絶など、文明の 機器は壊滅的になり一部独立機能しか使えていない状況が続いている。これらの二次災害によりさらに人口は減少し続けている。

金融システム他、一極集中型の政府機能であった政府機能は麻痺し、各暫定政府は自国の復帰に力をいれており、自国のみで復興出来ない国は滅亡し多くの難民を排出。
しかしながら、受け入れる余裕を持つ国など存在しない。交通網やライフラインなどの復旧は芳しくなく、多くの企業が倒産し世界は戦後恐慌となった。
日本は自給率の乏しい国である。戦前から自覚していたことが、ここにきて露出した。
各国も自国民に食料を回すことに全力で、日本には輸出されてくる食糧は微々たるものであった。

物価の高騰、失業、所得の減少はそれまでの秩序を破壊し、戦災孤児や戦争による身体障害者などが巷に溢れ、いたるところに悪質なスラム街を形成した。
人民を守る国家と言う役割を果たしているはずの政府の権力が弱体化しており、あってなきにひとしいそれを、武力や恐怖政治によるものでなんとか維持しているのが現状である。
戦後三年ともなれば、主要部分はわずかながら復興を果たしたが、その他の部分は廃墟のままというのは珍しくない。

さらに、元々は天皇を最上も戴くニホンであったが、戦中の混乱に乗じて皇室は行方不明となりその生死はいまだにつかめていない。





第三次世界大戦中に得をしたものはごくごく一部である。

戦中に頭角を現した軍的派閥の一門を抱えこんだConfidential-company(コンフィデンシャルカンパニー)…巨大ゼネコン企業はそのまま分断されたニホンの東側の復興に甚大な力を注ぎ込み、実権を握った。

ConfFdential-Company …CFCの実態は武器の製造によって多大な富を築いた死の商人である。CFCは主にバイオ関係に強く、CFCにより開発された兵器や細菌兵器は日本という小国が他国を相手にぎりぎりながら生き残ることが出来たのである。

また、彼らの思考は単純明快、一目瞭然、ただひとつ―――すなわち、弱肉強食。

弱きものは強者に支配され、食われる運命。
弱者を排除し、強きもののみが上へと上れる完全なる実力主義。
泥沼から何が何でも死に物狂いで上を目指すものが数多く頭角を現した。





一方、健全な思考と呼べる理想を掲げるのは西側の勢力日興連――正式名称:日本復興連合である。
かつて、武士(サムライ)の国と呼ばれた日本独自の自然との協和、人間との絆、民主主義を掲げるのがこちらの思想である。

日興連の思想に共感する人間は多い。
しかし、それが実生活としてなりたってくるものかといえばそうではない。
理想は理想であって、実際の日興連の環境も幾分CFCよりも自由というだけであり、その根底には強いものが裕福になるという形は変わらない。

今はまだ復興途中の国には、誰もが裕福になるという理想は遠い話でしかなく、例え共感したとしても、今はまだ己が足元の地盤を固めることに誰もが精一杯の時代なのである。

特権階級と一般市民との格差は開く一方である。





戦前、世界に誇る首都であった大都市東京。
ニホン国内の中心都市は、その重要性から他地よりも集中攻撃を受け、もっとも被害を受けた。
ちょうど、ニホンの中心となっているそのトウキョウは、CFC及び日興連の非戦闘区域として指定され、どちらにも属さないが故にどちらの支援も受け付けない無法地帯となっていた。

旧祖トウキョウの一角にある地域。
そこは”トシマ”と呼ばれ、犯罪組織”ヴィスキオ”に乗っ取られていた。
そこでは、王座を掛けて戦う”イグラ”と呼ばれるバトルゲームが開催されていた。ゲーム…などという遊びの呼称ではあるが、実際は命をかけたデスゲーム。
挑戦者はトランプを模した5枚のタグをランダムで与えられ、ポーカーに習ってロイヤルストレートフラッシュ、もしくは10以上のフルハウスを作るべく”イグラ”参加者同士でタグを奪い合う。―――否、殺しあう。


ロイヤルストレートフラッシュ、もしくは10以上のフルハウスを完成させると、姿を見せぬヴィスキオを創立した王”イル・レ”と呼ばれる存在、彼に挑む権利を与えられ、さらには王を倒すことが出来たのならば、その地位と金がまるごと勝者に与えられるという。

地獄の中に自らを投じ、頂点を目指し、血に塗れて群がる命しらずの愚者ども。

荒廃し、東西から見はなされた地上の治外法権都市のひとつ。それが、”トシマ”。
入ったら二度と生きて出られぬ「魔都」としての呼び声高いそこでは、命を奪うことすら犯罪とならない。


犯罪組織ヴィスキオの主な財産源はCFCや日興連にまで及ぶ麻薬”ライン”である。

”ライン”―…その生産方法や入手経緯は一切が不明である。
しかしながら、ラインのもたらす効能は精神、肉体の両者に真に作用する。従来の精神の高揚による強くなったような思い込みではなく、肉体に作用し通常の倍近い俊敏さや力を発揮することが出来る。その恩恵を求め、力を求めた人々はラインを摂取する。

だが、所詮は麻薬。
一度や二度ぐらいの使用ならばまだ手放すことは出来る可能性もあるが、中毒性が高いソレは、やがては己が身を滅ぼすのだ。





はらり、はらりと、薄皮がはがれ堕ちゆくように。身のうちから毒に犯される。






CFCと日興連の保ち続けた偽りの平和は、唐突に崩れた。
旧祖トウキョウの中でも、もっとも無法とされた都市トシマへのCFC及び日興連による唐突な殲滅作戦により、両者の間にあった均衡は崩れ、国内紛争が始まったのである。


これが、2093年。
当初は日興蓮の優勢かと思われた。しかし、戦後の五年間の間に培われていたCFCの弱肉強食によって培われた軍人たちの勢いは衰えず、徐々に日興連は押されていった。
戦闘禁止地区旧祖トウキョウの中でも、もっとも無法とされた都市トシマへのCFC及び日興連による殲滅作戦により、両者の間にあった均衡は崩れ、国内紛争が始まったのである。2093年、のちのモノたちが始まりの年と呼ぶ。

この事件についての詳細は今現在でも不明である。
両者の間でその日になぜ示し合わせたように開戦がなされたのか。


当初は日興連の優勢かと思われた。しかし、戦後五年間によって骨の髄へと浸み込んだCFCの弱肉強食の精神は、軍人たちの勢いを後押しした。


勝て!勝て!勝て!
徐々に日興連は押され、CFCにより占領されていった。



だが、蓋を開けてみれば勝利したのは日興連であった。
旧CFCの軍備は日興連によりも多くの武器を抱えていた。
しかし、日興蓮軍は勝利した。考えられる理由は、ただひとつ。武器の質・量の差ではない。それを扱う者の性能がものをいったのだ。

その後、東西の支配権は日興連の主導によって行われるだろうと思われた。事実、日興連側軍部により人々の暮らしに法が作られた。
問題は東西を合併したときに立つ明確な指導者がいなかったことである。
もちろん、有能な将は幾人かいた。
彼らはそれぞれに派閥を作り、国のトップ ――…かつての旧日本でいうところの、"天皇"(もちろん、ただの象徴でもなく、傀儡でもなく、実質を握った)…―― になることを熱望した。


政治面でなく、軍事面による勝利は日興連内での軍閥派の発言力を大きなものにした。


いわずもがな、それは内部軋轢となる。
もとは平和な旧日本のような素朴さを求めていようが、実際の権力を前に欲望が芽を出した。互いに互いを押し合い、ひとつになったかと思われた東西は再び悪化を辿るかと思われた。

第三次世界大戦後二つに分断されたニホンであるが、CFCの軍事的支配の下、再び統一がなされた。







西暦2097年。
第三次世界大戦から九年、国内戦争の発端・統一から四年の月日がたったとき、一人の男が刃を掲げた。その男はいつの間にか日興連兵どもを掌握し、上層部の指揮官を次々と静粛していった。
本来、謀反とも呼べるこの事態に軍隊内での混乱が予想されたが、一切そのようなことは起こらなかった。

静かに淡々と。
足元に迫りくる霧のように速やかに全てが実行に移された。

そして、CFCに宣戦布告。
長期化が予想された東西戦争であったが、日興連側の圧倒的戦力によりCFCはなすすべもなく敗退する。









―――… 時は西暦2098年。
第三次世界大戦後二つに分断されたニホンであるが、CFCの敗北宣言により、再び統一の号令が出される日が訪れた。




――…かくて、一人の男がニホンの王イル・レとなる。


王の名を"シキ"という。

若き王はカリスマであった。
唯我独尊、人を人とも思わず「力」を求める強者。しかしながら、その強さに誰もが畏怖と憧れずにはいられない。
高みに登り、すべてを手に入れ踏みにじり、血で染め上げたような真紅の瞳で世界を睥睨する王。



これが、支配者という生物なのだ。


心胆から沸き起こる畏怖の念が人々を絡め、平伏させる。
(それは、強者に従う、弱者の本能!!)

唯我独尊、人を人とも思わず「力」を求める強者。すべてを手に入れ踏みにじり、世界を睥睨し、嘲笑する紅の瞳を持つ王。











彼は言う――…「力こそ全て」と。









※第二部の導入。年号についてはもちろん捏造。公式出てれば知りたい。出てないです、よ、ね?